3-5. しかし、ユダが口をはさみました。 「忘れたんですか、お父さん。 『弟といっしょでなければ来てはならない』ってあの人が言ったのは、決してただの脅しじゃないですよ。 ベニヤミンがいっしょでなきゃ、あそこへは行けません。」
21. 帰る途中、ある所で夜を過ごしたのです。 ところが、袋を開けると、代金としてお払いしたはずの金が入っておりました。 これがその代金です。 お返ししようと持ってまいりました。
22. 今回の分は、別にちゃんと用意してあります。 あれ以来、どうしてこれが袋の中にまぎれ込んでしまったのかと、皆で首をひねっておりました。」
23. 「ご心配には及びません。 代金は確かにいただきましたよ。きっと、あなたがたの神様、つまりあなたがたのご先祖の神様が、入れておかれたのでしょう。 不思議なこともあるものですね。」こう言うと、執事はシメオンを釈放し、兄弟たちのところへ連れて来ました。
24. 一同は屋敷に招き入れられ、足を洗う水を与えられました。 ろばも餌をもらいました。
25. お昼にはヨセフが来るということです。 一同はすぐ贈り物を渡せるよう、抜かりなく用意しました。 なんでも、昼食をいっしょにするらしいのです。
26. ヨセフが戻りました。 一同はていねいにおじぎをし、贈り物を差し出しました。
27. ヨセフは皆にその後のことを尋ねました。 「で、おまえたちの父親はどうしているかね。 この前もちょっと聞いたが、まだ達者かな?」
28. 「はい、おかげさまで元気でおります。」 そう言って、もう一度おじぎをしました。
29. ヨセフは弟ベニヤミンの顔をじっと見つめました。 「これが末の弟か。 そうか、この子がなあ。 どうだ、疲れてはいないか? 神様がおまえに目をかけてくださるように。」
30. ここまで言うのがやっとでした。 あまりのなつかしさに胸がいっぱいになり、涙がこみ上げてきたのです。 あわてて部屋を出て寝室に駆け込み、思いきり泣きました。
31. 泣くだけ泣くと、顔を洗い、何くわぬ顔で一同のところへ戻り、感情を押し殺して、「さあ食事にしよう」と言いました。