3. さてヤコブは、セイルの地エドムにいる兄のエサウに使いをやり、こう言わせました。
4. 「兄さん、おひさしぶりです。 ヤコブです。長いことごぶさたしましたが、お変わりありませんか。 私は最近までラバン伯父さんのもとに身を寄せていました。
5. ようやく、牛やろばや羊や奴隷を持てるようになったので、帰国することにしたのです。 だれよりもまず兄さんに、そのことをお知らせいたします。どうか快く迎えてくださいますように。」
6. 使いが戻りました。 エサウは四百人の手勢を引き連れて、出迎えに来る途中だということです。
7. 恐れていたとおりです。 なんとか手を打たなければなりません。 ヤコブは気が動転しながらも、窮余の一策を練りました。 一行を二つに分けるのです。 家畜の群れや、らくだも全部です。
8. 「もしエサウが一方に攻撃をしかけても、もう一方はなんとか助かるだろう」というわけです。
9. やるだけのことはしました。 あとは神様に祈るだけです。「祖父アブラハムも信じ、父イサクもお従いする神様、国へ帰れと私に命じ、必ず祝福すると約束してくださった神様、
22-24. しかし、やはり心配でなかなか眠れません。 まだ夜中だというのに起き出し、二人の妻と二人のそばめ、それに十一人の子供を起こしました。 家族を連れてヨルダン川を越え、無事にヤボクの渡しを渡り終えるのを見届けると、もう一度テントに戻りました。 もう全く一人きりです。 と、そこへ一人の人が現われたではありませんか。 二人は明け方まで格闘を続けました。
25. なかなか勝負がつきません。 その人はとうとう、ヤコブの腰を打って関節をはずしてしまいました。
26. 「もう行かせてくれ。 じきに夜が明ける。」 その人が頼みました。しかしヤコブは、はあはあ息をはずませながら答えました。「私を祝福してくださるまでは絶対に離しません。」
27. 「おまえの名前は何というのか。」「ヤコブと申します。」
28. 「いや、もうヤコブではない。 神と戦い、強さを示したのだから、イスラエルと変えるがいい。 これからは人と戦っても勝つだろう。」
29. 「よろしければ、お名前をお聞かせください。」「いや、それはできない。」 そう答えると、その人はその場でヤコブを祝福しました。
30. ヤコブはそこをペヌエル〔「神様の顔」の意〕と名づけました。 彼が、「神様とじきじきお会いしたのに、死なずにすんだ」と言ったからです。
31. さあ、出発です。 日ものぼりました。 しかし、腰の関節がはずれていたので、足を引きずらなければなりませんでした。
32. イスラエル人が今でも腰の肉を食べないのは、このためです。